技術と夢をミカタしてくれる部活動〈愛知総合工科高等学校〉

T&E鳥人間部

今年で創部4年目となる「T&E鳥人間部」(以下、鳥人間部)。専攻科(18歳~20歳が通う学科)では企業と大学が授業に直接関わり、より高度で実践的な学びを受けられるのが特徴。自動車・航空コース(*)の子どもたちが企業から直接指導を受けていた際、「この学びを形にすることが子どもたちにとってより大きな成果に繋がるのでは。」という話から鳥人間部創部となりました。鳥人間部は高校3年生にあたる本科、専攻科の子どもたちが航空分野のシステム設計開発を行っている企業と学校の先生からの指導を受けながら滑空機の図面設計から組み立てまでを1年かけて行います。普段のテストは学校のグラウンドや体育館を使用しますが、実際に大空を飛ぶのは鳥人間コンテストの日のみの一回勝負。すべての技術と思いを本番に懸けています。(*自動車・航空機について高度な技術を身につけた産業人材の育成を目指すコース)

 

 

「一つひとつに工夫があり、技術がある」

そう話すのは鳥人間部では初の女性パイロットとなる専攻科一年の西山さん。以前から飛行機が好きで、その技術を学ぶため、この学校に進学。また、以前から鳥人間に関わりたい思いもあり、パイロットに志願し、今回の機上へと繋がりました。主翼部分の組み立ても行っていますが、使用するスチレンペーパーはとても薄くて繊細。それを飛行機の骨となるカーボンパイプに丁寧に貼り付けるのも難しいとのこと。「滑空機はただ飛ぶのではなく、それを造っていく工程、一つひとつに工夫があり、技術があるんです。」そう目を輝かせて話してくれる西山さん。次の目標は航空系ボランティアとしての活動や航空大学へ入ること。今は滑空機製作に関わりながら筋トレをして、来たる大会に向けて身体づくりも心掛けているそうです。

 

鳥人間部初となる女性パイロットの西山さん

 

「安全に配慮することと乗る人の気持ちになること」

今回リーダーとして指揮をとっている専攻科1年の中野さんは鳥人間部2年目です。高校3年のときから部活に関わり、将来は航空関連事業に関わるのが夢。現在はテストランに向けて急ピッチでの作業が行われています。昨年はテストランで上手く飛ばずに心が折れそうになりながら、それを反省点として生かして取り組み、本番の鳥人間コンテストで飛んだ時は一年間の思いとともに感動に包まれたそうです。滑空機に対しての熱い思いを語ってくれた中野さんにどんなことを大切にしているのかを伺ったところ、「滑空機は怪我や命に係わることもあります。だからこそ安全に配慮することを一番に考えています。そして乗る人(パイロット)の気持ちになって設計していくことも大切にしています。」と話されていました。

 

リーダーとして周りとコミュニケーションをとりながら作業を行なう中野さん

 

「コノウエ参式」でさらなる記録と学びを

今年は「コノウエ参式」(機体名)で昨年の飛行記録を超えていけるよう、部員と先生、企業が三位一体となって完成へ向けて取り組んでいます。毎週水曜日に非常勤講師として指導されている航空分野のシステム設計開発を行っている株式会社シーアールイーの田中さんは「ここの子どもたちはみんな真摯に取り組んでいますね。飛行技術はもちろんですが何よりも安全に飛行できるようにすること。それを常に伝えています。」部活の顧問である小笠原先生は「学年ごとに作業内容は違いますが、年を重ねるごとにそれまでの経験を生かし、みんなでコミュニケーションを取りながら協力していくことを大切にしています。授業で学ぶ溶接やCADは自動車・航空産業を学ぶ子どもたちが将来必要なもの。その学びを形にできる『実践の場』である鳥人間部を通じて更なる関心を深めていってもらいたいです。」

 

 

航空への関心を実際の形にしていける鳥人間部。そこには大空へ夢を抱く子どもたちと、その夢を学校・企業が一丸となって支えていく姿がありました。今年の鳥人間コンテストではコノウエ参式が大空に飛び立つ様子を見るのが楽しみです。

 

T&E鳥人間部「コノウエ参式」の子どもたち

本科(高校3年生)…18名
専攻科1年生…5名
専攻科2年生…7名

そこに近隣の聾学校の子ども5名を含め、総勢35名が関わっています。そのうち、女子は3名。
設計は専攻科2年生、組み立ては尾翼を専攻科2年生、主翼を専攻科1年生と本科が担当しています。

 

みんなで一丸となり、コノウエ参式に情熱を注いでいます

 

愛知総合工科高等学校
名古屋市千種区星が丘山手107
052-788-2020

 

-取材記事