社会福祉法人みなみ福祉会 幼保連携型認定こども園 笠寺幼児園
知育ism冬号を発行するにあたり、取材をさせていただいた笠寺幼児園。鈴木園長よりさまざまなお話をいただき、編集したものを誌面に載せております。今回は事前にいただいてた話を原文そのままで載せております。
鈴木登之宗 園長
保育理念のひとつである「豊かな人間性」について
豊かな人間性を育てるには、どれだけ周囲から刺激を受けるかに関わってくると思います。人間性とは色々な面があります。感受性・協調性・客観性・独創性・創造性…。それは複数の人が関わる事で育つこともあり、また一人でも育つこともあります。周囲の環境でも変わってくると思います。
例えば、一人遊びが好きで園庭で昆虫をジッと見つめている園児がいるとします。その子は何かに興味を持ったのです。その興味が観察する行動を起こさせ、観察することにより色々な想像をし、疑問へとつながり、その回答を得ようと本を調べたり、大人に聞いたり、インターネットで調べるようになります。その回答がさらなる疑問に広がり知識を得ようとするループを形成されます。それを見ていた周囲の子どもたちが興味を示し、同じ講堂に移し、複数人が意見を言い合うようになり、他の考えを受け入れたり、否定したりしていきます。これが創造性・協調性等へとつながっていきます。日常の何気ない行動・経験を繰り返し行うことにより、人間性が形成されていくと思います。その人間形成は環境づくりも重要です。
(写真はイメージです)
保育士の仕事は環境を整える・与えることが重要です。保育所には年齢の違う多くの子どもたちがいるため、それぞれ興味があることに違いがあり、何に興味を示すかわかりません。だから年齢・月齢に応じた環境をつくり、安全に配慮しつつ、子どもたちが夢中になれることを提案・作成しています。色々な経験・体験の中で子どもたちが将来の夢や目標が掴めたら、これほど嬉しいことはありません。
異年齢保育と世代間交流について
笠寺幼児園の保育スタイルは、年齢別・クラス別に行っており、普段は異年齢と関わることは少ないです。ただ、異年齢のふれあいは必要と考えていますので、散歩に出かけるときに5歳児と2歳児が手をつないで出かけたり、2歳児の入眠を5歳児が手伝ったりしています。本年は行事として異年齢保育の日を設けました(10月21日)。午前中の遊びやゲーム・食事・着替え・午睡まで一緒に過ごしました。年長児は下級児の手伝いをして兄・姉の気分を味わい喜んでいました。下級児は少し緊張した様子もみられましたが、笑顔で過ごしていました。少子化で兄弟姉妹がいない園児もいるため、どのように扱うのがいいのかと、恐る恐る手伝いをしている年長児もいました。
(写真はイメージです)
世代間交流は年長児が年に2回、近くの福祉会館にお邪魔して、園で習ったお遊戯を踊り、高齢の方が福祉会館で習われている歌・踊り・楽器演奏を披露してくださるのを観覧してお互いの練習の成果を発表する場となっています。発表会後には子どもたちの手作りの団扇などを手渡しており、受け取られる高齢者が皆笑顔になると子どもたちも笑顔になります。また、年に一度近所のデイケアセンターを訪問し、利用者と一緒に手遊びや歌の発表を行っており、こちらも喜ばれております。
特集である「普通」について
「普通」とは人が生きていく中で周囲との違いを意識し始めたときから始まり、周囲の大人・社会の環境・考え方により確立されてくるものだと思います。しかし本来それは人の価値観の中にあり、人それぞれに普通があり、現代において「普通とは何か」がわからない時代に入ってきていると思います。一昔前なら世間の普通が良く、非普通ははみ出し者という風潮があり、皆「世間の普通の中で人生を送る」を目標に生きてきたと思います。
個性や表現が自由になり、多様性が重視される時代において個人の普通が世間には個性として受け止められ、自由に生きていけるようになったと感じます。ただ、すべての自由が承認されるのではなく、普通の幅が広がったという感じに思います。保育所の子どもたちは色々な面で未発達な部分が多く、経験も少ない中で普通を身につけていくタイミングにあります。現場では保育士の普通を押しつけるのではなく、最低限の普通(ルール)を知らせながら自由な発想を大切にしています。
(写真はイメージです)
例えば、蛇に足がついた絵を描いた子どもに対して、「違うでしょ!」ではなく、「足が速そうな蛇だね」と声を掛けると嬉しそうな顔をします。作品展においても廃材を利用して作成していますので、自由な組み合わせで面白い形で表現してくれます。
保育所ではなるべく個性が出せる環境をつくるように意識しています。